高校時代、私が通っていた学校は毎年国公立大学に200名以上が進学する進学校でした。当然ながら学業に対する学校からの要望は高く、1年生の頃は数学の先生に「プロ野球選手になるわけでもないのにそんなに野球頑張って何か得はあるのかな?」と嫌味っぽく言われたこともありました。
そんな中で、高校3年生になる前の春休みに我々は念願の選抜大会に出場して、憧れの甲子園の土を踏みました。甲子園の話は今回の本題ではないので言及しませんが、甲子園から帰って3年生に進級した時、進路指導の先生が私のクラスの数学教科担任になることがわかりました。進路指導の先生なので、当然生徒の学業に対して最も煩い先生です。
「あー、また野球のことで嫌み言われるんだろうな」
最初の授業の前はとても後ろ向きな気持ちでした。
そして授業中にいきなり発表を当てられました。
「あー、きた。いきなり大勢の前で吊し上げかよ・・・。」
ところがその先生の言葉は私の予想を裏切るものでした。
「お前、野球部のエースで野球ばっかりやっとるのかと思ったら、成績良いんだな。もっと勉強頑張れ!でも野球も頑張れ!夏も甲子園行け!」
私は元々数学は得意ではあったのですが、まさかみんなの前で褒められるとは。予想外の展開で戦闘体制だった私は完全に肩透かしを食いました。そしてその先生の術中にハマった私の数学の成績はその後も上がり続けて校内でも成績上位者に定着しました。
今思えば当時は本当に忙しかったですが、野球も学業も身内以外に期待してくれている人がいることが励みになり、忙しい中でも目の前のことを真剣に取り組むことで野球も学業も少しずつ目標を上方修正し続ける、充実した高校生活でした。
今、チームでも上級生は進路に関する会話が始まっています。
うちのチームの選手は元々学業に対する意識が高く、有名私立中学に通っている選手も多いのですが、私は高校時代の恩師に言われたように「どっちも頑張れ!」と言っています。うちの選手たちにも目の前のことを精一杯頑張る中で、野球も学業も「人生の目標」を上方修正してくれたら、私の高校生活を充実させてくれた先生に対するご恩返しになるのかな、と思います。 頭の良い子は頭の良い野球をします。
「野球」と「学業」は2つの道ではなく同じ道だと思います。私は前述の進路指導の先生からこのことを学びました。
だから「文武両道」ではなく「文武不岐」だと思います。
