この季節は来年の新1年生が4月からの所属を決める時期であると同時に、現在チームに所属している選手が移籍を検討する時期でもあります。保護者の方と話していても最近は「本人に決めさせる」「本人の意見を尊重する」という保護者が多いです。親が決めた場所に無理やり押し込むような時代ではないようです。
果たして、実際に保護者が子どもに対して「あなたが決めなさい」と言った時、子どもは決められるものなのでしょうか?
どこかを選ぶだけなら大抵の子はできるでしょう。しかし大切なことは「決める」という行為だけでなく「良質な決断をすること」だと思います。この「良質な決断」を小学生が自力でできるか?というとかなり難しいと思います。それは小学生の場合、自己分析が不十分なため、自己に対する過大評価や過小評価が起こりやすいためです。そこには選手の一番の理解者である保護者のサポートが絶対に必要です。
我々のチームも全ての選手にとって良いチームではありません。うちは人数も少ないのでそれほど競争は激しくないですが、選手間の結束が強く、向上心の高い選手が多いので「和気藹々、のんびり楽しく」や「他人に煩わされず自分の技術を優先的に磨きたい」を求める選手には不向きだと思います。チームを選ぶ際にミスマッチを起こさないよう、良質な決断を行なって頂きたいと思いこれを書きました。ご参考にして頂ければ幸いです。
これまでの指導経験の中で、大きく分けると3種類の選手が居るように思います。またその3種類の中にも亜種がありますのでそこを紹介したいと思います。
『競争』によって能力開発される選手
他人と競い合う中で成長するのが得意なタイプです。学習に例えると「テストで1番を取りたい」と思って勉強するタイプですね。元々競争心が旺盛で、他人に勝利することに快感を感じる、いわゆる「本物の負けず嫌い」です。
このタイプは大所帯、または能力の高い選手が集まる強豪チームに所属すると能力が開発されます。強力なライバルがいるほど良いと思います。
「本物の負けず嫌い」は競争に勝つためにはどんな努力も厭わないのですが、「勝ちたいけど努力は嫌い」な偽物も居ます。偽物は競争が厳しい環境に入っても努力しないので挫折してしまうことがよくあります。
保護者は我が子が「強いチームでやりたい」と言った時に「本物の負けず嫌い」の素養を持っているかどうかの見極めが必要となります。
『協働』によって能力開発される選手
競争よりも仲間と一緒に成長したいと考えるタイプです。学習に例えると「グループ学習が好き」なタイプですね。仲間と同じ目標を追いかけ、目標達成のために協力し合うようなスタイルが得意なタイプは大所帯で「競争」が盛んなチームよりも、やや人数が少なめのチームの方が適性が高いと思います。
このタイプの中にも本物と偽物が居ます。本物は「自分も仲間に貢献したい」という気持ちを持っていますが、偽物は「自分の成長のために仲間を利用したい」と思っています。偽物は仲間に協力を求めますが、自分は仲間に協力しないので、やがて周囲との折り合いが悪くなっていきます。
あと単に「仲間との馴れ合い」を好むだけの選手もいます。
チームにも「協働を重視してレベルアップを図っているチーム」と「単に選手同士が馴れ合っているだけ」のチームがあります。
マンツーマン指導で能力開発される選手
他人と一緒に練習するよりも「自分のペースでやりたい」というタイプです。学習に例えると「個別教室」が「自主学習」が得意なタイプですね。このタイプは他人に合わせることにストレスを感じることもあるようです。
このタイプは個別練習のドリルを多く取り入れていたり、指導者が個別指導をちゃんと行なってくれるチーム、または個別練習が行き届いている「野球塾」で練習すると能力が開発されやすいです。
しかし、野球は団体競技なので少なからず「協働性」が求められます。個別練習で技術は上がっても、「協働性」の能力開発を並行して行わないと最終的にはチームで孤立してしまい、結果としてパフォーマンスも限定的なものになります。
技術指導やドリルばかりやっているチームを見て、保護者が「うちの子に合っている」と判断してしまうと、野球は上手くなっても協働性が未発達の「独りよがりな選手」になってしまう可能性もあります。

「『良質な決断』を子ども自身で行うのは難しい」と言ったのは、子ども自身が自分はどのタイプかを正確に把握しているケースは稀有だからです。保護者がこれまで我が子を見てきた上での経験則、「どんな風に野球をしたいか?」という本人の意思を詳細に確認する親子の会話によって、「どんなチームに適性が高いか?」が見えてきます。
そして、これらの要素はイベント的な「体験会」ではなかなか見えないものです。1〜2回練習を見たくらいでも見極めは難しいです。ただ、ヒントになる要素はいくつかあります。そのヒントとなる要素は次回にでも書きたいと思います。