バットに関する雑感
- 6 時間前
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今年はMLBでも「魚雷バット」が話題になっています。
バットの形状を変えることで従来のバットよりも芯を手元の方に寄せたこのバットは打撃に対する考え方を大きく変えるものだと思います。
魚雷バットは誰もが恩恵を被るものではなく、従来のバットに詰まり気味の選手にとって「元々芯が手元にあるバット」という選択肢ができたことで活路が拓けたものとなります。春先にアメリカで話題になった魚雷バットも最近では外角球には芳しくない成果を示す統計も出始めています。万能な魔法のバットではないのです。
恐らくアーロン・ジャッジ選手や大谷翔平選手は今後も魚雷バットは使用しないと思います。もしイチローさんが現役だったら、やはり使わなかったと思います。理由は魚雷バットが持つ特性が彼らの打撃の長所と合っていないからです。
一方、日本でも昨年から高校野球ではバットの規格が変わったことで野球が大きく変わりました。これは魚雷バットによる「新たな選択肢の登場」とは違って「規制」です。打者にとっては打撃の難易度が上がったことになります。打者は規制に対応することでこの局面を乗り切らなければ「打てない選手」になってしまいます。
我々がやっている中学硬式野球はまだ規制は緩やかです。
ボーイズリーグは今年から複合素材のバットが段階的に禁止となりますが、他の団体ではまだ規制はされていません。しかし、昨今は中学時代からウエイトトレーニングによってパンプアップされた選手によって打球速度は上がっています。このままだと危険が増すので今後何らかの規制は発生するでしょう。
私は昔から選手に「複合素材のバットは使わない方が良い」とアドバイスしてきました。
理由は「面白くない」と思うからです。
「芯が広いバットで打った方が打てるから面白いのでは?」と思う方もいると思います。何を「面白い」と思うかは人によると思いますが、私は「難しいものに挑戦することで『試行錯誤するプロセス』『できた時の達成感』が面白い」と思うので複合バットの使用は勧めていません。「手っ取り早く結果が出た方が面白い」「試行錯誤するプロセスなんていらない」という選手はうちのチームに入っても楽しくないと思います。
複合素材のバットをパワー重視で振り回した方が結果は出やすいです。パワーさえあればスイートスポットが広いので簡単にヒットが出ます。詰まっても内野なら簡単に越えます。でも複合素材に慣れてしまった選手の末路は哀れです。大学に進学後、木製バットに対応できなくて活躍できない選手はたくさんいますが、複合バットは単一素材の金属バットよりも更にスイートスポットが広いので、複合バットに慣れた選手は高校で「木製バットに対応できない大学生」と同じことが起こります。
うちの選手は練習の大半を木製バットで行います。
打球は飛ばないです。でもその中で「インパクトの時の微妙な音の違い」「手に残った感触の微妙な違い」を感じ取ってもらうことを大切にしています。これから長くプレーを続けてもらうためにも、その辺の感性が雑になって欲しくないからです。
「今の打球音、ちょっと乾いた感じでさっきとは微妙に違うよね?」
こういったコミュニケーションを大切にしています。
